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対人関係

こんな時どうする?
【やる気が起きない】

本記事は対人関係に悩みを抱える人が現状を見つめなおし、対人関係の課題に取り組むきっかけをつかむことを目的にお送りしています。


現場の看護師から受ける相談や、私が経験した事例をもとに一緒に考えていきます。
今回のテーマは、「やる気が起きない」です。

やる気が起きない日は誰にでもある

看護師として仕事をしていると、誰でもやる気が起きない日くらいはあるでしょう。

どんな仕事でももちろん大変ですが、看護師の仕事も決して楽なことばかりではありません。国家資格を取得するために必死で勉強したとしても、就職以降も勉強は続きます。高度化・専門家する医療現場で働いていくためには、自己研鑽が終わることはあり得ません。

日々の仕事とプライベートの両立だけでも大変なのに、空いた時間で自己研鑽するわけですから時間は足りません。そんな生活を続けるためにはモチベーションの維持は必須ですし、「やる気」が起きないときっと難しいでしょう。

多くの方は仕事とプライベートのバランスを取りながら、かつ仕事にやりがいを見出し、悩みながらも看護師を続けておられると思います。そのためには、旅行・趣味などを楽しむこともきっと大切です。多くの方は、こうして精神的な健康を保ちながら、仕事に向き合っているのです。

「やる気が起きない」と話し続ける人

ところが、時にそのバランスを大きく崩す方があります。

当然、本来の仕事ができなくなりますがこうした時、「やる気が起きない」と話します。もともと他者からは意欲的に見えていた方でも、やる気が無くなることはあります。どんな人にでも起こり得る状態です。きっと、何か大変なことがあったのでしょう。その結果、時にはやる気が無くなってしまうことはありえます。

ただ、それが続くのはあまり健全とは言えません。もし精神的な疾患を疑うのであれば、精神科受診をすることをお勧めします。カウンセリングを受けたり、精神科医師の治療を受けたりしたほうが良いでしょう。

ただし、例え大変な問題に直面しその結果「やる気が起きない」としても、すべての原因を病気に求めるのは非現実的です。

実際、精神的な疾患が否定されたにもかかわらず、「やる気が起きない」と言い続ける方は多くいます。涙ながらに辛さを訴え、わかってくれない他者を批判します。理解を示してくれる人には、異様に信用を寄せます。自分を受け入れてくれない人には、批判的になります。周りの人は困り果てますが、相手にしないわけにいかなくなります。

どうしてそのような行動にでるのでしょうか。

発想の転換

こうした場合、「なぜ?」と原因を追究しても、埒があきません。本人にきいても、「わからない」、「原因が解るなら自分がしりたい」と言うでしょう。あるいは、「○○さんがあの時自分を傷つけたから」とか、「どうせ自分がダメだから」などというのが関の山でしょう。

このままでは解決の糸口はつかめません。あえて視点を変えましょう。「原因」ではなく、「目的」を考えるのです。

では、「やる気が起きない」と訴えるひとの「目的」はなんでしょう。

行動の目的は何か

一つは、他者の関心を引きたいのです。自分がどれだけ辛いのかを他者に知らしめれば、可哀そうがられるでしょう。誰かが悪いと批判すれば、同調してくれるひとが出てきます。かりそめの仲間が簡単に得られるのです。

そして、そのつらさは医学的に証明できないのです。私たち看護師にとっては最強の殺し文句です。「医学的にどうしようもできない」のですから、代替案はありません。

本当は「黙って私にあわせろよ」と言いたいのです。ただ、決して本人は認めないでしょうし、自覚もしていないでしょう。

そしてもう一つ、人生の課題から逃げたいのです。

仕事はもちろん、プライベートがすべて順風満帆にすすむ人はだれ一人いません。もしいたとしても特殊な例でしょう。

人は生きていれば、大小の課題に直面するものです。そして、その課題のほとんどは致命的ではありません。そのたくさんの課題に向き合い、ぶつかり、乗り越え、時には避けて、小さな失敗と成功を積み重ねていくのが人生であり、成熟した大人なのだと思います。

付け加えるなら、失敗か成功などというのは自分が決めた基準です。あと振り返ってみれば、失敗だと思っていたことが自分の成長に繋がっていることもあるでしょう。その逆もしかりですね。

課題に向き合うことに恐れている

つまり、人生の課題に向き合うことを恐れ、逃げ回ることを選んでいる人が「やる気が起きない」と言い続けるのです。やる気が起きなければ、課題に向き合わなくて良くなります。

周りの人も腫れ物に触るように接し、課題を与えることもなくなります。課題に向き合わなければ、失敗はありません。はれて「課題の回避」という目的が達成されるのです。

失敗したくない人は、自分を認めることのできない人です。「ありのままの自分で良い」と思えないのです。

これからどうするか

では、周りの人はどうしたらよいのでしょうか。

残念ながら、原則何もできることはありません。

本人が課題に向き合う気がないのに、他者が無理やりやる気を起こさせることはできません。もし励ましたり慰めたりした結果、やる気が起きたように見えても一時的なものです。他人に相手をしてもらえたから行動したのであって、接するのを止めたとたん元通りです。

冷たいようですが、本人が気づくまでそっとしておきましょう。ただし、「助けてほしい。自分は変わりたい」と申し出てきたのなら、話し合う余地はあります。

一方、やる気のない人を支援したいと心に決めたのなら、方法はあります。

「やる気がないあなたにも価値がある」と伝えるのです。おそらく、やる気の出ない人は相当な努力家なのです。本来まじめで、仕事に一生懸命取り組む方なのです。こう振舞っていれば多くは、ほめられたり承認されたりしていたのです。

ただ、仕事はそう甘くありません。失敗することもあれば、例え成果が出てもほめられないことがあります。こうした経験を苦痛に感じ、「ほめられないのなら、失敗するくらいなら、やる気は出さない」と決意したのです。

そうであれば、「例えほめられなくても、やる気が出なくても良い」と伝えていきたいのです。

「頑張っているあなたにしか価値がない」と今まで言われてきて、本人もそう信じているのでしょうが、それはおかしな話です。頑張っていないとしても、ただ普通に仕事をし、生きているだけで周囲には何らかの貢献をしています。そこに着目したいのです。

人を変えようとしてはいけない

ただ、ここまで考えてきたことを踏まえ声掛けをしても、そうやすやすと人は変わりません。そもそも、人を変えようと思うことが傲慢な考え方だとも思います。変わるのは常に自分だけです。

それでも、この人と付き合っていく、良い関係であり続けることを決意して接していれば、何かが変わるかもしれません。

そんなあなたの対人関係の在り方を見た相手は、「無理にやる気を出さなくても、自分らしくいればいいんだ」と思える可能性はあります。

相手が「やる気が起きない」と言わなくても良い、関係性を築けるといいですね。

あなたはどう考えますか。

この記事に登場する人物・事例・団体などはすべて架空のものです。筆者の所属施設・関連施設とは一切の関係はありません。プライバシーに配慮して、実際の事例をもとに内容を構成したものを掲載しています。

ABOUT ME
小林 雄一
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師「看護師失格?」著者 看護師の育成に取り組むと同時に、看護師の対人関係能力向上に貢献するため、面談・セミナー・執筆活動を行っています。