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脳卒中の基礎知識

これは押さえて! 脳神経ナース
【脳梗塞の外科的治療 再発予防】

脳梗塞 基礎知識

脳卒中とは死亡する人が多く・後遺症が残る疾患です。脳卒中とは、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3つです。

脳卒中のうち最も多いのが脳梗塞です。脳梗塞とは、脳の血管が狭くなったり詰まったりした結果、その先に血液が流れなくなるため、脳の細胞や組織が壊死してしまうことです。

脳血栓と脳塞栓に分類され、発症原因によりアテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓症・ラクナ梗塞に分けられます。

外科的治療 再発予防

この記事では、急性期治療より少し後の病期に行われる「再発予防の外科的治療」を説明します。代表的なものに、頸動脈ステント留置術(CAS)・頸動脈内膜剥離術(CEA)・頭蓋内外血管吻合術(STA-MCA吻合術・OA-PICA吻合術など)があります。これらは原則、亜急性期以降の再発予防を目的に行われます。

外科的治療の適応

外科的治療には適応があります。以下の基準をもとに、医師が症例ごとに適応を検討します。

  1. 症候性の高度~中等度狭窄
  2. 症候性の軽度狭窄でも、頸動脈プラークの不安定化や潰瘍形成がある場合
  3. 無症候性の高度狭窄
    • 狭窄の程度は中等度が50~60%、高度は70%以上とされています。また、症候性とは「頚部内頚動脈狭窄症が原因で、脳梗塞やTIAなどを生じること」を指します。

治療の選択

狭窄度の分類と治療の選択を表にまとめています。何パーセント狭窄しているかの判断は、複数の計算方法があります。

外科的治療の種類

再発予防のための外科的治療で、代表的なものを3種類お示しします。頸動脈内膜剥離術 (CEA:Carotid Endarterectomy)・頸動脈ステント留置術 (CAS:Carotid artery Stenting)・頭蓋内外血管吻合術 (EC-IC by-pass)です。

頸動脈内膜剥離術 ・頸動脈ステント留置術は頸動脈狭窄に対する治療、頭蓋内外血管吻合術は頭蓋内主幹動脈狭窄に対する治療です。

それぞれ説明していきます。

頸動脈内膜剥離術 (CEA:Carotid Endarterectomy)

頸動脈内膜剥離術 (CEA:Carotid Endarterectomy)は、頸動脈を露出・切開してプラークを取り除く手術です。

全身麻酔下で行うので、身体が麻酔の負担に耐えられない場合手術ができません。頸動脈高位(高い位置)にある病変は、下顎骨が邪魔になり切開が困難になるため適応になり難いです。

頸動脈ステント留置術 (CAS:Carotid artery Stenting)

頸動脈ステント留置術 (CAS:Carotid artery Stenting)は、カテーテルを用いて狭窄部位を内側からステントで広げる手術です。血管造影(DSA)で実施され、局所麻酔手術できることがメリットです。全身麻酔に耐えられない対象に実施できる可能性があります。

大変優れた手術ですが、注意点もあります。内側からステントで物理的にプラークを押し広げることになります。その際、塞栓子がパラパラと飛んで行って、脳梗塞を作る危険性があります。これを防止するためヘパリンによる抗凝固化に加え、様々な塞栓防止デバイスが用いられます。

https://www.kango-roo.com/sn/k/view/3350 看護rooより引用

過灌流症候群

過灌流症候群という合併症があります。頸動脈ステント留置術(CAS)、先述の頸動脈内膜剥離術(CEA)いずれにも起こりうるものです。

頸動脈が長期間狭窄すれば、細い血管で脳血流を補っていたことになります。手術により頸動脈狭窄が解除されると相対的に多量の血流が頭蓋内に流れ込み、これに脳が耐え切れなくなるため生じます。

症状は、血圧上昇・頭痛・痙攣などが挙げられます。早期に適切な降圧をし、場合によっては鎮静により脳代謝を低下させる必要があります。時間経過とともに脳に耐性が生まれ、ほとんどの場合過灌流症候群は軽快します。

しかし、過灌流症候群を放置すれば痙攣重責・脳浮腫・脳出血に伸展し、最悪の場合では死亡することもある合併症です。

過灌流症候群が起きやすい時期は、CASは術後12時間以内、CEAは術後6日目です。

頭蓋内外血管吻合術 (EC-IC by-pass)

頭蓋内外血管吻合術 (EC-IC by-pass)です。頭蓋内の血管が狭窄しているため、頭蓋内外の血管を吻合して頭蓋外から血流を供給するのが吻合術(パイパス術)です。既に閉塞した血管を再開通するのは危険なため、この方法がとられます。

対象血管が前方循環(内頚動脈系)なら、浅側頭動脈-中大脳動脈(STA-MCA)、後方循環(椎骨脳底動脈系)なら後頭動脈ー後下小下脳動脈(OA-PICA)が一般的です。

下のイラストでは、浅側頭動脈-中大脳動脈(STA-MCA)吻合術を説明しています。内頚動脈(IC)や中大脳動脈(MCA)閉塞症に適応です。

他疾患では、もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)にも適応があります。

http://neurosur.kuhp.kyoto-u.ac.jp/patient/disease/dis02/ 京都大学医学部附属病院脳神経外科HPより転載

外科的治療 再発予防 まとめ

再発予防のための外科的治療をまとめます。

  1. 頸動脈ステント留置術(CAS)・頸動脈内膜剥離術(CEA)・頭蓋内外血管吻合術(STA-MCA吻合術・OA-PICA吻合術など)がある
  2. 亜急性期以降の再発予防を目的に行われる
  3. 過灌流症候群には注意が必要

脳梗塞の治療を知れば、看護も変わります。目の前の患者さん、「これからどうなるのか」意識してみてください。

本サイトの情報が、より良いケアの手助けになれば嬉しいです。

ABOUT ME
小林 雄一
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師「看護師失格?」著者 看護師の育成に取り組むと同時に、看護師の対人関係能力向上に貢献するため、面談・セミナー・執筆活動を行っています。