本記事は対人関係に悩みを抱える人が現状を見つめなおし、対人関係の課題に取り組むきっかけをつかむことを目的にお送りしています。
現場の看護師から受ける相談や、私が経験した事例をもとに一緒に考えていきます。
今回のテーマは、「あの人の行動、実は深いワケがあった!?」です。
日常の「あれ?」に隠された人間関係のヒント
看護師の仕事は、患者さんやそのご家族、そして多職種のスタッフとの連携が不可欠です。毎日が「対人関係」の連続ですね。
そんな中で、「なんであの人はいつもこうなんだろう?」「どうしてこんな言い方をするんだろう?」と、相手の行動や言動にモヤモヤしたり、理解に苦しんだりすることはありませんか?
例えば、
- いつもピリピリしている先輩ナース
- なぜか協力的じゃない後輩
- 患者さん・ご家族の、理不尽な要求
など、何か一つは思い当たるはずです。
ただ、私たちが「当たり前」だと思っている行動や考え方の裏には、実は深い理由や背景が隠されていることがよくあります。いつも通っていたはずの道が、新しい視点を持つことで全く違う表情を見せるように、そこには「なるほど!」と膝を打つような意図が隠されていることがあるのです。
先ほどの例ですが、理由や背景を想像し少し見方を変えてみます。
- いつもピリピリしている先輩ナースの「本当の気持ち」
- なぜか協力的じゃないように見える後輩の「隠れた意図」
- 患者さんのご家族の、一見理不尽に思える「要求の裏側」
こう考えるだけで、すでに冷静になれていないでしょうか。
「知らないこと」を知る喜びが、対人関係を変える
私は昨年、大型自動二輪の免許を取りツーリングを始めました。これまで何度も通った慣れた道も、大型バイクに乗ると全く違って見えました。何十年も車とバイクには乗っていたのに、です。
景色の広がり方、空に浮かぶ雲の形、潮の香りが混じる風、ひんやりとした朝の空気、降り注ぐ太陽の光。同じ道、同じ時間に見えても、二度と同じ瞬間はありません。
これまでの乗り物では気づかなかった風や匂い、路面のわずかな傾斜まで五感でより鮮明に感じられるようになった時、「自分がどんな視点で世界を見ているかによって、同じ場所でもこんなにも多くの『知らないこと』が隠されているんだ!」と深く感動しました。窓越しだった景色が、全身で感じる世界になったのです。そして同時に、新たな発見ができることに心からワクワクしたのです。
この「知らないことを知る喜び」は、まさに人間関係にも通じます。視点を自分が変えるのです。
私たちはつい、自分のものさしで相手を判断しがちです。しかし、相手の行動や言動の背景にある「知らないこと」(例えば、その人の生い立ち・過去の経験・現在の状況・性格特性、あるいはその瞬間の感情や意図など)を知ろうと努めることで、見え方がガラリと変わることがあります。
モヤモヤをスッキリさせる3つの視点
では、具体的にどのように「知らないこと」を知り、対人関係に活かせば良いのでしょうか?
- 「なぜ?」を掘り下げる視点: 相手の行動に対して、反射的に「おかしい」「嫌だ」と感情的になる前に、一歩立ち止まって「なぜ、あの人はそう行動したのだろう?」と考えてみましょう。その背景には、もしかしたら不安や焦り、あるいは別の意図が隠されているかもしれません。
- 「もし自分だったら?」と想像する視点: 相手の立場に立って、「もし私が同じ状況だったら、どう感じるだろう?」「どんな選択をするだろう?」と想像力を働かせてみましょう。これは共感力を高め、相手への理解を深める第一歩です。
- 「聞く」ことで知る視点: 最も直接的で効果的なのは、相手に直接尋ねてみることです。もちろん、尋ね方には配慮が必要ですが、「何か困っていることはありませんか?」「〇〇の件で、何かお手伝いできることはありますか?」といった問いかけは、相手が心を開くきっかけになることがあります。
あなたの「知りたい」が、より良い関係を築く
人間関係のモヤモヤは、しばしば相手の「知らない部分」から生まれます。しかし、そこに潜む「知らないこと」に好奇心を持ち知ろうと努めることで、単なる誤解が解けたり、新たな発見があったりします。
看護師としての経験を積む中で、多様な人々と関わる機会はさらに増えていくでしょう。その中で、「この人はなぜこうなんだろう?」という疑問に出会ったとき、ぜひ「よし、この『知らないこと』を知ってみよう!」という探究心を持ってみてください。
あなたの「知りたい」という気持ちが、よりスムーズで、より心温まる対人関係を築く大きな力になるはずです。
あなたはどう考えますか。
この記事に登場する人物・事例・団体などはすべて架空のものです。筆者の所属施設・関連施設とは一切の関係はありません。プライバシーに配慮して、実際の事例をもとに内容を構成したものを掲載しています。