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対人関係

「仕事に行きたくない」と感じるあなたへ:あなたの心に隠された大切なメッセージ

本記事は対人関係に悩みを抱える人が現状を見つめなおし、対人関係の課題に取り組むきっかけをつかむことを目的にお送りしています。

現場の看護師から受ける相談や、私が経験した事例をもとに一緒に考えていきます。
今回のテーマは、「仕事に行きたくないと感じるあなたへ」です。

仕事は行きたくないもの

朝、目覚まし時計が鳴る。その瞬間、ズンと心にのしかかる「あぁ、仕事に行きたくない……」という感情。看護師として日々患者さんの命と向き合う中で、時にはそうした気持ちになることもありますよね。「ナースの面談室」には、同じような悩みを抱える方が多くいらっしゃいます。

この「仕事に行きたくない」という感情は、決して甘えや怠けではありません。それはあなたの心が発している大切なメッセージであり、より良く生きるための「目的」が隠されていることが多いのです。そしてその背後には、私たち自身の対人関係の課題が隠されていることも少なくありません。

「なぜ行きたくないのか」?その心の奥にある「目的」を探る

私たちは、無意識のうちに何らかの目的を達成するために行動すると言われています。例えば、「仕事に行きたくない」という感情も、何らかの目的を叶えるためのサインだと捉えることができます。

どんな目的が考えられるか、例をお示しします。

  • 「疲れていて、とにかく休息したい」のでしょうか? 燃え尽き症候群の手前かもしれません。
  • 「職場の人間関係のストレスから逃れたい」のでしょうか? 特定の同僚や上司との関係性に悩んでいる可能性があります。
  • 「自分の能力に自信が持てない」のでしょうか? 失敗への過度の恐れを抱いていたり、自分を過小評価したりということはないでしょうか。
  • 「今の仕事内容に不満がある」のでしょうか? やりがいを感じられない、あるいは別の仕事への興味が芽生えているのかもしれません。
  • 「もっと評価されたいのにされない」と感じていますか? 自分の貢献が認められず、承認欲求を満たされたいと考えている可能性があります。

このように、「仕事に行きたくない」という感情の背後にある具体的な目的を探ることが、解決への第一歩となります。無理に「行きたくないなんてダメだ」と自分を責めるのではなく、「この感情は何を教えてくれているのだろう?」と、一度自分の心に問いかけてみましょう。

これからどうするか

私たちが不快な感情を自覚した時、目をそらして生きることは確かにできます。

気分転換という名の逃避行動をとることも簡単です。他者に責任転嫁したり、自責的になったりは良くあることです。あるいは快楽を得て、不快感情を忘れようとすることも人は選びがちです。身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。

一方、不快感情に向き合うことも私達にはできるのです。今回であれば、「仕事に行きたくない」という感情に隠された目的を真摯に考えることです。そうすれば、前述した逃避行動をとるときとは違った景色が見えてきます。

では具体的にこれからどうするか。一緒に考えて行きましょう。

「完璧でなくていい」という心のゆとりを持つ

もしかしたら、あなたは完璧を求めすぎていませんか?

人は誰しも不完全な存在です。看護師という仕事は、常に完璧を求められるようなプレッシャーを感じやすい職種だと言えます。実際に私もそう感じる場面は多いです。

しかし、「失敗してはいけない」「弱みを見せてはいけない」という思いが強すぎると、それが大きな重荷となり、「仕事に行きたくない」という感情に繋がることがあります。

自分のできることとできないことを区別する

困った時に、素直に助けを求める勇気。

完璧でなくても良いと、自分自身を受け入れる勇気。

これらを持つことで肩の荷が下り、心が楽になることがあります。完璧な自分を目指すのではなく、今のありのままの自分を受け入れることで、新たな一歩を踏み出す力が見つかるかもしれません。

「誰かの役に立っている」という感覚を大切にする

私たちは、「私は誰かの役に立っている」「私は皆と繋がっている」と感じることで、心からの幸福感を覚えます。

仕事に行きたくないと感じるとき、もしかしたら「自分は役に立っていない」と感じていたり、職場の人間関係の中で孤立感を感じていたりするのかもしれません。

小さなことでも良いので、誰かに感謝された経験を思い出してみましょう。 患者さんの笑顔、同僚からの「ありがとう」の一言など、ささやかな喜びが力になります。私たちは感謝されるために働いているわけではありませんが、お礼を言われたとき確かにあなたは貢献していたはずです。

あなたが日々の業務で提供している価値を再認識してみましょう。 それは、患者さんの健康だけでなく、職場の円滑な運営にも繋がっています。

もし可能であれば、職場で誰かを「応援する」行動をしてみましょう。 相手を信じ、受容することで、あなた自身の「貢献している」という感覚も高まります。この場合も、決してほめるのではありません。ただ、感謝を伝えるのです。

「誰かの役に立っている」という実感が、再び仕事への意欲を取り戻す大切なきっかけになることがあります。

「自分の課題」に集中する

「仕事に行きたくない」という感情の裏には、他者の評価や期待に応えようとしすぎている背景が隠されている場合があります。

看護師さんと面談していて気付くのは、自分に望ましい結果が訪れなかったとき「私のせいで」としばしば仰ることです。

本当に看護師であるあなたのせいなのでしょうか。私たちは、「誰の課題か」を明確にすることが大切です。

上司の下す評価は、上司の課題。

同僚の感情は、同僚の課題。

患者さんの回復は、患者さんと医療チームの共同の課題。

あなたは自分の仕事に責任を持つ必要はありますが、他者の感情や評価を「自分の課題」として背負い込みすぎると、それが苦しみに変わります。あなたの「仕事に行きたくない」という感情は、もしかしたら「他者の課題」に振り回されていることへの警鐘かもしれません。

あなたはどう生きたいのか

あなたが本当に望む生き方、働き方は何でしょうか。他者の期待に応えるのではなく、「自分の人生を生きる勇気」を持って、自分自身に問い直してみましょう。

もちろん、私自身も「自分の人生を生きる勇気」とは何かを考え続けている一人です。

多くの方の相談をお受けし、対話に真摯に取り組んでいるのも事実です。その一方、対人関係につまずくこともあれば「仕事に行きたくない」と感じることもあります。

ただ、それでも「仕事に行きたくない」を不快感情として終わらせるのか、対人関係の課題として考察を深めるのかでは大きな違いがあると考えます。

「仕事に行きたくない」という感情は、あなたが自分自身と向き合い、より良い対人関係を築くための大切なサインです。その目的を探り、完璧でなくても良いと自分を認め、誰かの役に立っているという実感を持ち、そして自分の課題に集中する。

このような生き方をしている人は実際にあります。

あなたはどう考えますか。

もしこの記事を読んで、自分自身の心と向き合うヒントを見つけられたと感じたら、ぜひ「ナースの面談室」であなたの心の声を聞かせてください。

また、こうした心の動きや、人との関係性の奥深さについて、もっと深く知りたいと感じたなら、ぜひ『嫌われる勇気』という本を手に取ってみることをお勧めします。きっと、あなたの明日を少し楽にする考え方に出会えるはずです。

この記事に登場する人物・事例・団体などはすべて架空のものです。筆者の所属施設・関連施設とは一切の関係はありません。プライバシーに配慮して、実際の事例をもとに内容を構成したものを掲載しています。

ABOUT ME
小林 雄一
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師「看護師失格?」著者 看護師の育成に取り組むと同時に、看護師の対人関係能力向上に貢献するため、面談・セミナー・執筆活動を行っています。