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脳卒中の基礎知識

脳神経ナース必見!【今さら聞けない?脳梗塞】

脳梗塞を説明できますか

看護師として働いていると、脳梗塞の患者さんに関わったことがあると思います。脳神経疾患関連部署であれば、毎日のように担当するでしょう。既往に脳梗塞がある方も含めれば、一度は出会っているはずです。脳梗塞は看護師はもちろん、一般の方にもよく知られた疾患です。もし「脳梗塞について説明してほしい」と患者・家族に言われたときには、自信をもって答えたいものです。

https://dialogue-room.site/type-of-stroke

脳梗塞とは

脳梗塞とは、脳の血管が狭くなったり詰まったりした結果、その先に血液が流れなくなるため、脳の細胞や組織が壊死してしまうことです。脳血栓と脳塞栓に分類されます。また発症原因により、アテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓症・ラクナ梗塞に分けられます。

発生機序から見た脳梗塞

脳梗塞を発生機序から見てみます。「どんな詰まり方があるか」という説明です。下のイラストをご覧ください。

脳梗塞 発生機序

  1. 脳血栓症
    動脈硬化により血管の内膜が肥厚し、血管の内腔が細くなります。そこに血栓ができて血管を詰まらせ、その先が虚血となり脳梗塞が完成します
  2. 脳塞栓症
    血管は健康でも、心臓など別の位置でできた栓子・血栓が血流にのって飛んできます。そしていきなり詰まって、脳梗塞が完成します
  3. 血行力学性脳虚血
    動脈硬化などで血管がもともと細い状態の場合起こります。脱水などにより血流が低下した場合、血管が完全に詰まってなくても末梢まで血液が届かなくなります。この結果、脳虚血に陥り脳梗塞が完成します

脳梗塞 臨床的カテゴリー分類

ここからは臨床的カテゴリー分類に沿って、脳梗塞の種類別に説明していきます。「どこがどのように詰まっているか」というイメージです。

心原性脳塞栓症

バイエルファーマナビ「脳卒中とは 心原性脳塞栓症」より転載

原因

心原性脳塞栓症の原因は心疾患です。一番多いのが心房細動です。他には心不全や心臓弁膜症が原因になります。心房細動になると、心房が不規則に震えた状態になります。すると心房の中で血流が滞り血栓ができます。こうして心臓にできた血栓が血流に乗って脳へ運ばれて脳の太い血管が詰まり、脳梗塞を発症します。

症状

特徴的なのは、脳梗塞症状が「突発発生の症状完成型」であることです。それまで全く症状がないのにある時突然脳梗塞症状が発生し、そのまま症状が固定します。主幹動脈(脳の最も太い血管で、内頚動脈・椎骨脳底動脈を指すことが多い)の塞栓は、特に症状が重くなります。広範囲の脳塞栓が起これば、脳浮腫・頭蓋内圧亢進・脳ヘルニアが起こり、場合によっては死に至ります。

発生機序

脳塞栓症は、脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞「大梗塞」です。心臓にできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を閉塞します。最多の原因は心房細動で、治療は抗凝固療法です。

メドトロニック株式会社HP 急性期脳梗塞とその治療より転載

 

心原性脳塞栓症 画像

画像を見てみましょう。左二つが頭部CTです。単純CTでは、骨が白・髄液が黒・脳実質が灰色に移ります。一番左が発症3時間後、左から2番目が24時間後のCTです。赤丸で囲った部分が脳梗塞です。発症3時間後では少しわかりにくかったものが、24時間後にははっきりわかります。
次に左から3番目の写真を見てください。発症1時間後のCTです。脳梗塞がさらにわかりにくいですね。実は早期虚血性変化がありますが、なかなか見分けられません。しかし、一番右側の画像、MRIでは同じ部分が白くぼんやり写っていますね。急性期脳梗塞です。MRIの撮像法の一つである、DWI(拡散強調像)では早期虚血性変化が高吸収域(HIGH)になります。明るい白です。脳梗塞患者さんを受け持つとき、こうして画像を確認するとある程度の予後予測ができ、必要な観察やケアが予測できるようになります。画像をみる習慣を持ちたいですね。

ここで脳卒中啓発動画、心原性脳塞栓症版を見てみましょう。

日本脳卒中協会脳卒中啓発動画 DVD H23より 転載

アテローム血栓性脳梗塞

バイエルファーマナビ「脳卒中とは アテローム血栓性脳梗塞」より転載

右中大脳動脈先端で脳梗塞が起こっています。少し大きめの脳梗塞とわかります。

原因

頭蓋内外の主幹動脈のアテローム硬化が原因です。アテローム硬化を粥腫ということもあります。先にお示ししましたが、アテローム血栓性脳梗塞は「脳血栓症・脳塞栓症・血行力学性」いずれの原因にもなります。進行性に悪化しやすいことも特徴です。

発生機序

脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞「中梗塞」です。動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなった太い血管に血栓ができ、血管が詰まります。動脈硬化を発症・進展させる高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病が主な原因です。治療は抗血小板療法です。

メドトロニック株式会社HP 急性期脳梗塞とその治療より転載

アテローム血栓性脳梗塞 画像

脳のMRI画像です。DWI(拡散強調像)です。急性期脳梗塞をみつける画像と言えます。左中大脳動脈領域に比較的広範な高吸収域を認めます。明るい白になっている部分が脳梗塞です。画像診断でこのような画像を「水平断」と言います。水平断では頭を輪切りにして、下から見上げているイメージです。実際の患者さんでは向かって右が左側、上が顔面側になります。

ラクナ梗塞

バイエルファーマナビ「脳卒中とは ラクナ梗塞」より転載

中大脳動脈から脳の深い位置に入り込む、穿通枝という細い動脈の先端が詰まっています。細い血管なので、脳梗塞の範囲も小さいですね。これがラクナ梗塞です。

原因

脳の深い部分にある穿通枝閉塞が原因の小梗塞です。穿通枝の血管壁に生じる脂肪硝子変性・血管壊死による閉塞です。高血圧に大きく関係しています。ラクナ梗塞では通常、片麻痺や感覚障害を起こします。

メドトロニック株式会社HP 急性期脳梗塞とその治療より転載

発生機序

脳の細い血管が詰まって起こる脳梗塞「小梗塞」です。脳に入った太い血管から分岐した細い血管(穿通枝)が閉塞して起こります。日本人に最も多いタイプの脳梗塞として知られており、主に高血圧によっておこる脳梗塞です。治療は抗血小板療法です。

ラクナ梗塞 画像

脳のMRI画像です。左がT1強調画像です。脳の深い位置に小さな低吸収域があります。ラクナ梗塞は、おおむね1.5cm以下の脳梗塞です。右はDWI(拡散強調像)です。急性期脳梗塞をみつける撮像法でしたね。左脳に小さな高吸収域があります。これがラクナ梗塞です。

まとめ

脳梗塞とは

  1. 脳の血管が狭くなったり詰まったりした結果、脳の細胞や組織が壊死する
  2. 脳血栓と脳塞栓に分類される
  3. 発症原因により、アテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓症・ラクナ梗塞に分類される


脳卒中の種類を知れば、治療が予想できます。治療が変われば看護も変わります。目の前の患者さん「どの脳卒中かな?」と意識してみてください。自分にできることが見えてきます。

本サイトの情報が、より良いケアの手助けになれば嬉しいです。

ABOUT ME
小林 雄一
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師「看護師失格?」著者 看護師の育成に取り組むと同時に、看護師の対人関係能力向上に貢献するため、面談・セミナー・執筆活動を行っています。