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脳卒中の基礎知識

脳神経ナース必見!
【今さら聞けない?脳卒中の基礎知識】

脳卒中とは

脳卒中という疾患は死亡する人が多く・後遺症が残りやすい疾患です。

このため、脳神経ナースには多くの役割が求められています。「脳卒中の重篤化と合併症を防いで、後遺症を最小限に留める」、「患者・家族の生活再構築を支援する」、この2つは常に意識しておきたいです。

脳卒中患者が病院から退院した後、一見発症前の状態と変わりなく見えることがあります。ただ、全く同じということはほとんどありません。他者からはわかりにくい後遺症もあるのです。

脳卒中関連部署であればもちろんですが、既往がある方を含めれば、脳卒中に一度も関わったことがない看護師はおられないのではないでしょうか。

この脳卒中、ここでは「今さら聞けない?」をテーマに基礎知識を説明していきます。

基礎知識?

基礎知識というと、解剖生理・脳血管・脳循環・髄液循環・神経学的所見が思いつきます。漢字ばかりで、これではすこし身構えますね。

文字だけでは疲れるので、映像や図を織り交ぜてわかりやすくお示しします。

公益財団法人 日本脳卒中協会ホームページより転載

脳卒中を最も簡単に説明すると、「急性発症する脳血管障害・出血性病変と虚血性病変に分けられる・中枢神経障害なのでダメージは不可逆的」となります。

医療従事者以外に説明するなら、「脳血管が急に破れたり詰まったりして、その結果脳が壊れます。壊れて失ってしまった脳機能は、原則もとには戻りません。」となるでしょう。

日本人の脳卒中

脳卒中は、死亡する人が多く・後遺症が残りやすい疾患とお伝えしました。日本人の脳卒中の推移・傾向を数字で見てみましょう。

死亡しやすい

平成29年 人口動態統計月報年計(概数) 

このグラフ、看護師さんはよく目にしますね。看護師国家試験でも出題されることがあります。

日本人の死因別に見た死亡率です。1番は悪性新生物、2番は心疾患。

ここまではいいですがつぎの3番目、近年何度か順番が変わりました。脳血管疾患が3~4番を推移しています。肺炎・老衰が増えているという統計です。

脳卒中は元々日本人の死因第1位でしたが、昭和40年代以降は減少していることがわかります。

それでも「第3位になって、よかったね」ではありません。

死因別死亡率 第3位 

死亡数    10.9844人

平成29年 人口動態統計月報年計(概数) 


脳卒中、平成29年であれば死因別死亡率、第3位です。8.2%ですね。4位が老衰、5位が肺炎と続きます。第3位とはいえ、毎年約10万人が亡くなる疾患であることは変わりません。

要介護になりやすい

介護が必要となった原因 第2位

平成 28 年 国民生活基礎調査の概況厚生労働省

さらに、脳卒中は介護が必要になった原因第2位です。

近年、確かに脳卒中医療の進歩は目覚ましく、救命できるケースも増えています。効果的な治療が増えていることは確かです。

それでも、すべての人に良い結果が出るわけではありません。

一度脳卒中になれば元通りにはなりません。例え救命できても重い後遺症が残る疾患です。何とか助かっても、介護が必要になる人が多いという現実があります。

介護が必要になった原因の内訳です。第1位は認知症です。内訳でも認知症が目につきますね。これらは高齢化の影響ですが、脳卒中もこれだけあります。

注目すべきは要介護5になった原因第1位が、脳卒中であることです。

介護が必要になる原因は、「後遺症が残る」ことです。

脳卒中による後遺症には麻痺などの運動機能低下と、脳血管性認知症・高次脳機能障害などの認知機能低下があります。体が動きにくくなるだけではなく、認知機能が低下するのです。

運動機能低下に対する介護と、認知機能低下に関する介護は異なる知識・技術を要します。介護者の負担が増えることは間違いありません。

介護者支援をする際には、支援者である看護師にも適切な知識が求められます。


認知機能低下についてはこちらもご覧ください。

脳卒中の種類

脳卒中を最も簡単に説明すると、「急性発症する脳血管障害・出血性病変と虚血性病変に分けられる・中枢神経障害なのでダメージは不可逆的」でした。

これを図にすると下のようになります。

ここでのポイントは、脳卒中の分類が異なっても症状がとても似ていることです。

脳卒中を発症した患者さんが、症状だけではどの分類かは一概に決められないのです。たとえ症状が同じでも、血管が詰まると血管が破れるでは治療が全く逆になります。

治療のため血圧を下げなければいけない時に、上げてしまったら大変ですよね。これが理解できなければ治療はもちろん、看護もうまくはいきません。

脳卒中は3つ

このため、看護師は脳卒中の種類を正しく知っておく必要があります。脳卒中は大きく分けて3つです。血管が詰まるのは脳梗塞、血管が破れるのは脳出血、そして表面の血管が切れるのがくも膜下出血です。

もしかしたら複雑に感じるかもしれませんが、たった3つです。この3つだけ間違えなければ治療、そして看護を見誤ることはありません。

この機会にしっかり覚えておきましょう。

脳卒中の発症機序

脳卒中の発症機序を説明します。脳出血も脳梗塞も、基本的には動脈硬化が原因です。脳梗塞では、アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞が該当します。脳出血とは、一般的に高血圧性脳出血をさします。


その一方、例外があります。心原性梗塞(脳塞栓症)・くも膜下出血は動脈硬化とは直接的な関係はありません。心原性梗塞(脳塞栓症)は、おもに心房細動が原因です。また、くも膜下出血は脳動脈瘤破裂が原因です。

それぞれの脳卒中について、詳しい説明は別記事で解説しています。

まとめ

  1. 死亡する人が多い
  2. 後遺症が残りやすい
  3. 脳卒中の分類が異なっても症状が似ている
  4. 「血管が詰まる」と「血管が破れる」では治療が異なる
  5. 脳卒中は大きく分けて3つ
    • 血管が詰まる:脳梗塞
    • 血管が破れる:脳出血
    • 表面の血管が切れる:くも膜下出血

繰り返しますが、脳卒中とは死亡する人が多く・後遺症が残る疾患です。看護師の活躍できる部分がとても多い分野だと感じます。正しい知識と的確な技術で、患者・対象者・家族を支援できると良いですね。

本サイトの情報が、より良いケアの手助けになれば嬉しいです。

ABOUT ME
小林 雄一
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師「看護師失格?」著者 看護師の育成に取り組むと同時に、看護師の対人関係能力向上に貢献するため、面談・セミナー・執筆活動を行っています。